進む「開疎化」【新型コロナで急増。地方移住検討者】都市圏6人中1人が検討・関心。長距離居住地選びの現状
新型コロナウイルスで問われる働く場所と住む場所への意識変容
新型コロナウィルスによって働き方と移動についての捉え方が大きく変わりました。多くのビジネスパーソンが自宅待機となり、仕事はリモート、休日も自宅という今までなかった生活スタイルを強いられる結果となりました。テレワーク環境、5Gが進む中で「移動」の必要性が世の中でも問われ始める中、今回多くの方が「移動」「物理的な場所」について再度考たことだと思います。
今後、継続的にウイルスリスク、災害リスクに襲われると想定されています。首都圏在住者、都市圏ビジネスパーソンの生き残る道、日本全体が生きる道として重要な考え方として「人口分散」も議論の一つにあがっています。以前から言われていたことですが、コロナ、テレワーク、自宅待機、新しい生活様式をきかっけに人の意識が変わっているのは必然であると想像されます。今回コロナをきっかけに都市圏在住者が働く場所、住む場所についての捉え方がどのように変わったかを理解することが、今後の社会のあり方、地方のあり方、行政のあり方を想像するヒントになってきます。まずは、どの程度の方の住む場所への意識が変わり、実現するためのハードルが何なのかを理解できればと思います。
アフターコロナ、withコロナのキーワードとして注目される「開疎化」に繋がる意識変容を捉え、受け入れる地方都市の意識変容も含めた本当の意味での「開疎化」のあり方について考えていきたいと思います。
当たり前になるテレワーク、明らかになる無駄だった移動
今回、弊社トムス(静岡)とビジネスでご一緒している方とその周辺の方で、首都圏在住の方を中心に約200名(一部名古屋圏、関西圏、その他の方がいます。以下結果URL参考)の方にWebアンケートを実施させていただきました。テレワークの現状と今後の居住地の考え方に関しての意識変容についてです。
まず、都市圏の方の約70%の方が毎日テレワークか週1日から2日の出勤で対応している、していたという事実がわかりました。また、その多くの人が若干の支障はありながらも基本的に問題なく業務が進んでいるという結果です。若干の支障はオフラインでもあると考えれば、リモートワークの進め方としては、問題なく仕事ができた方が多かったのではないでしょうか?(なお業種のデータも取れていますが、今回の調査はオフィスワーカーが中心となっているのでその辺りは考慮が必要です。) (参照【表1】【表2】)
今まで当たり前だった、毎日の満員電車での出勤がなくても、ほぼ変わらない生産性が発揮できるということが明らかになり、体験をしたということになります。
【表1】あなたの現在の働き方(テレワークの状況)をお知らせください。(回答数: 189 )
【表2】現在の働き方(テレワークの状況)について、どのように感じていますか。(回答数: 152 )
すでに引越し済みが5%、約25%が今後の引越しを検討している(2020年5月10日現在)
週1回の出勤義務や基本テレワークの働き方が当たり前になったときに、都市圏近くに住むという選択肢はマストでなくなる可能性は高くなってきます。今回の調査では既に引越しをした方が約5%いることも判明し、全体の4分の1の方が引越し自体を検討しているという驚きのデータが判明しました。その中でも週1回の出勤義務や基本テレワークを前提にすれば、長距離通勤地方移住にも、検討してみたい方が約20%、実現可能性は問わなければ約50%の方が興味を持つという結果となりました。今回自由記述の結果を公開していませんが、自由記述の中には、移住に関しての課題をクリアすることを前提に考えれば、地方にすみながら都市圏の企業で働き、週1回程度出勤というスタイルを検討してみたいという方が多い結果となりました。(参照【表3】【表4】【表5】)
では、その課題とはなんでしょうか?
【表3】今回の新型コロナウイルス感染拡大や就労環境(テレワーク・休業など)の変化によって、引越しを実施または検討していますか。(回答数: 192 )
【表4】今後、政府発表の「新しい生活様式」やテレワーク環境が定着し、通勤時間や日数、出社時間に縛られない働き方が実現した場合、現在より通勤時間が長くなる場所でも、引越しを実施または検討したいと思いますか。(回答数: 192)
【表5】では、今後、テレワークが定着し、週1回の出勤でよいとなった場合、地方に住みながら、新幹線などを使って都市部(首都圏・名古屋・大阪など)に週1日程度出勤する働き方については、どのように思いますか。(回答数: 192 )
課題は「場所」「お金」「車」そして・・・
まず今回の調査の結果にもありましたが選択する場所の問題です。週1回の出勤とは言っても通勤時間で許容できるので1時間半、1時間が限界という意見がありました。地方移住は考えるが田舎すぎるのは難しいというコメントもあり、地方移住と言っても自分の満足できる場所がないとできないという趣旨のコメントは見受けられました。都市圏の中での最寄り駅までの距離を考えても、東海道線で方面(筆者が静岡なので)で通えるのは静岡駅、熱海駅、三島駅からの新幹線通勤までが限度ということもわかってきました。 (参照【表6】【表7】)
そして、次が「お金」「車」という意見も見受けられました。地方で暮らすということは車などの資産が必要になることなど、都市圏では必要なかったものを購入したり、鉄道インフラが少ないことへの不便さと出費が懸念という意見も多く感じました。ペーパードライバーであるということへの不安をコメントする方もいました。
そして、印象的で多かったのが人に関する懸念点でした。「保守的でよそ者を受け入れないのではないか?」「馴染めるか?」のような地方特有の人の繋がりへの不安をコメントする方が多かったように感じます。 せっかく都市圏の方のマインドが地方に向いても、こう言った懸念を払拭して行かなければ、働く場所と住む場所を分離させた新しい働き方はなかなか進まないこともわかってきました。
【表6】地方に住みながら、新幹線などを使って都市部(首都圏・名古屋・大阪など)に週1日程度出勤する場合、週1回程度の通勤で許容できる通勤時間は、どの程度ですか。(回答数: 93)
【表7】では、地方に住む、地方への移住を検討する上で、不安・問題はどのような点ですか。(回答数: 104 )
制度設計、企業との連携も重要
今回のアンケートで協力していただいた東京のITベンチャーの代表がこんなことをおっしゃっていました。「今回のことを受けて、交通費補助をテレワーク補助に変えた。週1回の通勤にできるようなら現状の交通費を別の形で補填する企業が出てくる可能性もある。」例えば、静岡から月に5回東京に通うとおおよそ6万円がかかってきます。この負担の何割かを企業が負担して、残りの負担を行政が負担してくれるようなことがあれば、会社として居住指定エリアにすることもできるのではないかと思います。
また、この代表の方はたまたま静岡出身の方ですが、例えば企業版ふるさと納税のような仕組みと連動させて、地方自治体に税収として入る仕組みを作れば自治体がわも実質負担がない、もしくは少なく維持した形で移住者の受け入れ、生活による住民税などの税収アップに寄与することもできます。
静岡にゆかりのある経営者だけでなく、通勤圏として捉えてくれる経営者の方がいたときに受け皿になる制度の設計は必ず必要になり、やるべきことではないかと強く感じました。
求められる地方都市の変化
今回の調査でわかったことは、コロナをきっかけに想像以上の方が引越し、新しい生活スタイル働き方に興味をもったということです。ただし、その障壁になる内容もわかってきました。「地方移住には興味があるし、検討したい。しかし・・・」この後に続くコメントをどれだけ解決できるかということが重要であるという印象を強く受けました。解決して受け皿を広げて行かないと、都市集中は解消されず、ウイルスや災害へのリスクオフの社会を作ることは難しいということです。都市に住む方が変わっても、地方の人が変わらないと、なかなか進まないと言いかえることができます。移住を阻む課題の中には、住んでみれば解決される慣れの部分の課題もありましたが、ほとんどは、教育、医療、インフラなど地方自体が抱える課題の解決、もしくは解決するための行動力に関することです。都市圏の方の居住に対するマインドが変わり始めているこのタイミングで受け入れ側の自治体、企業、住民が変わることができるのか。それが勝負ではないでしょうか?
地方で活動をする、自治体やメディアと連携してこの課題に取り組んでいきたいと思っています。
また今回のアンケートで協力していただいた方の3割程度の方がインタビューにご協力してくれるということですので、調査内容や追跡調査にご興味のある方、企業の方はご連絡ください。インタビューだけ見たいという方、一緒に何か企画したいという方なんでも結構ですのでお気軽にご連絡ください。クロス集計のデータがみたい方もご連絡いただければ、対応いたします。
並行して、アンケートにご協力していただいた方にインタビューなどを行い発信していきます。
■ 調査主体
株式会社トムス https://www.e-toms.com/
■ 筆者情報
株式会社トムス 中川豊章
Facebook https://www.facebook.com/takayuki.nakagawa.7545