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組織変容を促す、リトリートとは
- 公開日2023年1月10日
リトリートの目的
これを忘れてはいけません。
“組織のこれからのあり方に考えをめぐらせ、変容を促進する。”
− 沖縄リトリート旅のしおり資料より
Oh!なんて抽象的!
リトリートは「退却」などの意味を持つ言葉でありますが、転地療法として用いられ、ビジネスシーンでも、注目をされています。
7月29日~31日の3日間、県内複数社から経営層・マネージャー層などが参加し、組織のこれからのあり方について考えるため、リトリート研修を実施しました。
研修中は対話による内省を深め、内発的な気づきを得ることに重きを置いてプログラムを実施。また、補助的に組織論やコミュニケーション論などの座学も交え、より効果的な学びの促進を深めていくことが狙いでした。
本企画には各社それぞれ2名以上の参加としており、それは研修が終わり自社に戻ってから実行につながることが本質であることから、経験や対話を共有し、自社で継続的に取り組めるよう様にという狙いです。
静岡から出発して数時間。南の空は青く、たびたびのスコール。南国ならではの植物や家屋の作りに「あぁ、ついに来たんだな。」という気持ちでした。
そう、場所は沖縄です。物理的にも心理的にも静岡から離れる必要があるんです。
宿泊&研修施設 ホルトノキ
DAY1:日常を手放して場になじむ
初日は午後からのスタートでした。アイドリングも兼ねて、自己紹介、座学を中心に、2人一組で意見交換を挟みながら。
おおまかな内容は下記になります。
- チェックイン
- Bowlの紹介~管理も指示も手放した地方企業を紐解く~
- レッド組織、アンバー組織、オレンジ組織、グリーン組織、ティール組織について
- Bowlではどのように「自立自走する組織」を仕組化しているか
- チェックアウト
トムスに今年1年間を通して研修サポートをしていただいている一般社団法人POLiNE。「うつに特化した復職支援」事業を行う株式会社BowLを運営しており、そこで実践した組織経営のやり方を他業種の組織開発に広げていくために一般社団法人POLiNEが誕生しました。メンタルヘルス、Wellbeing、ティールの3つがキーワードです。
BowLではよくあるピラミッド型の組織構造、役割の構造をとっていません。「ロール(役割)」という仕組みで、権限と責任をセットでスタッフ個人に持たせ、セルフマネジメントで動く組織を実現させています。
ロール概念図
前日にBowLのミーティングを見学させてもらったのですが、BowLでは普通に使われていた言葉。私個人はなかなか言い出せないな~、会議の場で言えるかな~と考えてしまった言葉。
“手放す”
DAY1のタイトルにもこの言葉が使われています。
一見すると、「あきらめ」に近い表現に受け取ると思いますが、ちょっとニュアンスは違っていて、「執着から距離を置く」のほうがイメージに近いかなと個人的には感じています。
「このロール(役割)、手放してもいいですか。」
この言葉のやりとりが自然にできることに、なんだか健全さを感じました。
研修の方に話は戻りますが、BowLの取り組みを知って、いろんな感想が挙がりました。自分の組織ではどうなっている?いま所属している会社がなくなったら世の中はどうなる?自分はどうしたい?こんな問いをみなさん自分自身に投げかけました。これでDAY1は終了です。
グループディスカッションの様子
DAY2:感じてから考える
参加者同士、顔と名前をなんとなく憶えて、会話して、1泊して。ようやく心と体が、沖縄に馴染んできたメンバー達。DAY2では下記の内容に取り組みました。
- チェックイン
- 心理的安全性とリーダーシップ(座学&対話)
- チームに必要な問いに気付くカードを使ったワーク
- 非暴力コミュニケーション「NVC(Nonviolent Communication)」を体験するワーク
- マインドフルネス体験(沖縄の砂浜を歩きながら瞑想)
- チェックアウト
上記のワークでは、カードを介在させることで自分自身の内面と向き合います。
あえて言うなら、自分の気持ちを大切にしながら、客観的に観察する。また、他人のケースも見ることで、改めて自分はそれをどう感じたのか言語化する、を追求した内容でした。
カードを使ったワーク
少し話は逸れますが、心理的安全性について考える時間帯に、とても良い話を聞きました。
「フィードバック」の言葉からあなたは何を想像しますか?
私は「指摘」のイメージがありました。語源は諸説あるそうですが、BowLさんではこの言葉をこのように解釈しているそうです。
“フィードバック=栄養を与える”
−BowLさんでのフィードバックの解釈
フィード→food→食べ物
バック→back→土に還る
という風に解釈して、”物事がうまくいくように栄養を与える行為”だと。
そう考えると、フィードバックは非常に大切なことに思えてきますし、ネガティブな印象もあったのですが「さらに良くする」というポジティブなイメージに転換されます。
POLiNE代表の荷川取さんがポロリと言っていました。「植物がそうなように、組織も土が良くないと育たない。根を張れない。」
土から変えていく。それって組織の根本だよな、と改めて感じました。
組織づくりの大切なコミュニケーション方法が「対話」。
それは会話とも違って、対立でもない。分かりやすいリンクを貼っておきます。
https://www.sofia-inc.com/blog/9594.html
DAY2:延長戦
マインドフルネス体験後、少し足を延ばして温泉に入り、夕飯はお酒も入りつつのBBQでした。会社、立場、世代、講師と参加者、静岡と沖縄、さまざまな枠を超えて、組織について、今までとこれからについての話があちこちで繰り広げられました。宿泊施設のホルトノキさんが提供してくださったお食事やホスピタリティがあたたかく、本当によい時間を過ごすことができました。
この日の夜、私はサクッと寝てしまったのですが、男性陣は深夜まで盛り上がっていました。(想像は難くないですよね。)朝5時まで(!)会社のこと、仕事のことについてトコトン話したメンバーもいて、非常に濃い夜になったそうです。
焚き火を囲んで対話タイム
DAY3:気づきを言葉にする
最終日、静岡から身体が離れ、日々のせわしなく押し寄せる業務からも意識が離れ、ちゃんと「退却」し、自分の内側を見つめる準備が整いました。
研修の締めは、そう。あれです。
- チェックイン
- リフレクションカードPROを使ったワーク
- 研修全体を通したチェックアウト
トムスの研修でもたびたび活用したリフレクションカード。これまでと今回とで違うのは、「リフレクションカードPRO」を使ったということでした。これまではリフレクションカードレギュラーやキャリアを使っていました。PROはより業務に特化して、具体的に何を改善したいか、変えていきたいと思っているのか、を題材にして本質に迫るカード内容になっていました。
リフレクションとは、日々の経験を改めて問い直し私たちに必要な気づきを生み出すことです。日本語では内省や振り返りと表現します。経験を振り返ることで様々なことに気づき、よりよい未来をつくるためにどう行動していくか決めることができます。英語のリフレクションは日本語訳では「反射」となります。このカードを通したやり取りのすべてが自分自身に還ってくるのです。
リフレクションとは
コンセプト等、くわしい説明がリフレクションカード制作時のクラファンサイトの中にありましたのでリンクを貼っておきます。
https://www.makuake.com/project/reflectioncard/
リフレクションカードを発行しているRML(リフレクション メソッド ラボラトリー)さんでもリフレクションに関する情報がこちらのnoteで発信されているのでこちらもリンクを貼っておきます。
https://note.com/rml_reflection
話は戻り、グループに分かれ、ワークを進めました。参加者それぞれ、じっくり自分自身と向き合うことができたと思います。なぜそう思うかというと、最後のチェックアウトの際に、涙を流したメンバーが少なくなかったからです。涙を流さないにしても、こらえていたメンバーが多かったかな。
そう、大人が涙を流してしまうんです!なかなか他にないプログラムの研修だったかなと思います。
組織変容を目的とした研修なのですが、結果はみんな同じ場所にたどり着きました。
「人は変えられない、変えられるのは自分だけ。」
組織をとりまとめるリーダーが変わることで、組織全体が変わっていく。
私たちはそのきっかけを与えただけ。あとは勝手に転がっていくんです。
これから
チェックアウト後、せわしなく車に乗ってそれぞれ解散となりました。
何かが自分の中で変わったメンバーがひとりでも多いことを願います。
その後、変容は促進できたでしょうか。
日常に戻ると、このリトリートでの経験や感じたことは、いとも簡単に忘れてしまいます。どう継続させるか、今回のご縁をどう将来に繋げていくのか、POLiNEさんから受け取ったこの経験をどう広げてポリネーション(受粉)させていくのか、やらなくてはいけないことがまだまだありそうです。
ホルトノキから見る日の出
動画でイメージを確認したい方はこちらからご覧ください。