商品開発や新しく参入するマーケットの市場調査をおこなう際、何から始めればいいかわからない人がいるのではないでしょうか。
市場調査をおこなう際は、調査に合ったやり方や手法を活用しなければいけません。
この記事を読めば、市場調査の全体を通した流れが理解できます。調査手法ややり方を詳しく解説しているため、市場調査をおこなう際に必要な手法や分析方法が見つかるでしょう。
適切な市場調査を進めたい場合はぜひ参考にしてみてください。
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市場調査の基本のやり方・流れ
市場調査は、以下の6つの流れが基本項目となっています。
- 目的の整理・決定
- デスクリサーチの実施
- 市場調査の設計
- 調査の実施
- 結果の分析
- 意思決定
それぞれの項目を丁寧におこなうと、最終的に質の高い意思決定が可能です。市場調査の手順やポイントを理解していないと、無駄なコストがかかる可能性があります。
質の高い意思決定ができるよう、各項目の手順やポイントを解説していきます。
1.目的の整理・決定
市場調査を始める際には、何が知りたいのか、その知見をどう活用したいのかを明確にしましょう。
市場調査では、市場参入を目指すためなのか、すでに市場は決定済みで商品開発のためなのかなど段階によって必要な情報が異なります。
例)
参入する市場で最も売れている商品の価格を調査し、競合の価格や商品の品質を比べ、自社製品の価格決定に活用する。
つまり、調査内容の課題や目標を明確にしなければ、不要な調査に時間や費用をかけてしまうかも知れません。
最短ルートで調査を完了するためにも、市場調査の目的の設定や決定は非常に重要です。
2.デスクリサーチの実施
デスクリサーチは、調べたい市場調査のテーマに沿ってインターネット検索をする、情報がまとめられているWebサイトを利用するなどの方法があります。
公的機関や民間企業などのすでにあるデータを調査しておくと、無駄なコストをかけずに済み、場合によっては無料で必要な情報の入手が可能です。
情報収集をデスクリサーチでおこなう場合は、出典元や情報源の真意を確認する必要があります。データの信憑性を確認する際は、対象者・方法・期間などが明記されているかのチェックが重要です。
また、調査のデータ利用には、許諾が必要なものもあります。著作権に抵触しないためにも、許諾が必要なデータであるかを確認しておきましょう。
3.市場調査の設計
デスクリサーチをおこなった後は、市場調査の方法や内容を決定する計画設計の段階に入ります。
調査方法は定量調査・定性調査の2つに分かれており、それぞれ向き不向きがあるため、調査内容によって選択が必要です。
さらに、調査方法に合わせて対象者や対象人数、テーマなどの細かいところまで事前に決めておくと、予想外のコストや時間がかかりません。
あやふやにしている部分が多いと、予算やスケジュールが大幅に狂ってしまうため、事前に細部の決定を行い、計画的に市場調査を進めましょう。
以下に、市場調査設計の具体例を紹介します。
例)
目的:自社の新商品、ドライヤーの価格決め
調査方法:オンラインアンケート
調査ターゲット・対象者:ドライヤーに関心のある一般消費者や同様の商品を販売している競合他社の顧客
予算:オンラインアンケートプラットフォームの利用費用(約10万)、広告宣伝費用(約25万)、分析およびレポート作成費用(約15万)
調査期間:調査準備: 1週間・アンケート回収: 2週間・データ分析およびレポート作成: 1週間
4.調査の実施
市場調査の設計が決定した後は、設計内容に合わせて調査を開始します。
質の高い調査結果を出すには、調査をする際の対象者選定と敏腕調査員の確保が重要なポイントです。調査の内容によっては、エクストリームユーザー(※)を調査対象にするとより有効的な結果が期待できます。
また、調査を実施する際は、以下の3つに注意してください。
- 専門用語や業界用語は避け、適切な量の聴取内容に収める
- 適正順序で質問項目を設定し、誘導的な質問にならないよう注意する
- 対象者全員が回答できるよう選択肢を網羅する
調査前に、身近な人からの協力でフィードバックをしてもらうと、より質の高い質問が用意できるでしょう。
※自社サービスや商品を想定していなかった方法で利用するユーザーのこと
5.結果の分析(レポート作成)
調査の実施が終了した後は、調査結果を分析し市場調査の目的に沿ってレポートにまとめます。レポート作成は、単純にグラフや意見を羅列するのではなく、データの傾向を読み取ったり分類したりすることが重要です。最終目的の意思決定に向かって結果をまとめていきましょう。
一つの角度から深堀りするだけではなく、様々な角度から分析をおこなうと良いでしょう。
調査結果のまとめが困難な場合は、レポート作成のみを専門業者に依頼する方法もあります。必要な場合は検討してみてください。
6.意思決定
意思決定では、商品価格の決定やコンセプトへの落とし込みなど、どの行動に移るかを検討していきます。結果の分析や仮説をまとめたレポートをもとに、次のアクションを決定しましょう。
適正な意思決定をするためには、これまでの市場調査をどこまで丁寧に行ってきたのかがポイントです。最適な意思決定ができるよう、一つ一つの手順を丁寧にし様々な分析手法を取り入れ、市場調査をおこなうと良いでしょう。
市場調査の調査手法
市場調査の手法は、定量調査と定性調査に分けられます。
- 定量調査:あらかじめ設定していた仮説の検証をする場合に適しています。データを数値化して分析します。
- 定性調査:潜在的なニーズを分析し、改善のヒントや新しいアイデアを得たい場合に有効です。調査対象者からの行動や発言などを分析します。
それぞれ調査対象の数や分析データ、調査手法などが異なるため、調査したいデータや内容の性質によって、適切な方法を選ぶようにしてください。
定量調査と定性調査の目的や特徴を詳しく見ていきましょう。
定量調査 | 定性調査 | |
---|---|---|
目的 | 数値化可能なデータの収集 | 数値化できないデータの収集 |
特徴 | ・不特定多数のサンプルを得られる・客観的なデータが取得可能 | ・調査対象へ深い理解が得られる・ニーズを汲み取りやすい |
適した場面 | ・参入する市場の選定・マーケティング戦略の策定 | ・新商品の開発・自社プロダクトの改善 |
ただし、両方の性質を併せ持つ手法もあるため、一概にどちらかのみでしか調査ができないというわけではありません。
なお、自社製品のフィードバックを得るための調査は、市場調査ではなくマーケティングリサーチに分類されます。市場調査とマーケティングリサーチは、同義として扱われる場合もありますが、厳密にはマーケティングリサーチのほうが上位概念です。
市場調査は、マーケティングリサーチの一部と位置付けられます。
定量調査
定量調査は、量や数値で表せるデータを収集し、分析をおこなう方法です。結果が数値化できるため、説得力のあるデータの取得が可能です。
以下に、定量調査3つの手法の特徴をまとめたので、どの手法が調査内容に合っているのか参考にしてみてください。
調査手法 | 特徴 |
---|---|
アンケート調査 | ・直接調査対象者に質問をおこなう調査法・調査結果を割合や数値で示せるよう、2択形式の質問になっている |
購買データ分析 | ・調査対象者の情報や購入履歴が分かるデータ・商品のニーズ調査やトレンドの分析が可能 |
統計データ調査 | ・デスクリサーチとも呼ばれ、公的機関が公表しているデータをもとに調査をおこなう方法・データに信憑性があるか注意が必要 |
アンケート調査
アンケート調査は、データを取得するための代表的な手法で、直接調査対象者に質問を行います。アンケート調査を実施する主な方法を紹介しましょう。
- ネット回線を使ったネットリサーチ
- 電話を通じた電話調査
- 紙ベースの郵送調査 など
アンケート調査の一般的な調査項目は、調査結果を割合や数値で示せるよう、「はい・いいえ」のような質問形式をとることが特徴です。
アンケート調査は、さまざまな用途に活用できる汎用性の高い調査方法です。マーケティング戦略や商品開発に役立たせ、効果的に活用できるよう質の高い調査票の作成に力を入れましょう。
アンケート調査の項目を作成する際、調査対象者の意見を反映させるために、誘導的な質問にならないよう注意しましょう。回答者によって質問の受け取り方が異なると、意図した内容から外れてしまう場合があるため、あいまいな表現にならないよう注意してください。
購買データ分析
購買データ分析は、調査対象者の情報や購入履歴から購買傾向や市場調査のニーズを知る手法です。いつ・どんなものが・どれくらい売れたかのニーズ調査を行い、購買データをもとに売れ筋やトレンドを分析します。
正確な分析ができると、調査対象者の理解につながり、求められている商品や今後売れる可能性がある商品の推測ができます。
さらに、購買データは天気情報やキャンペーン情報など、さまざまな情報を組み合わせると活用の幅が大きく広がります。どのような情報が欲しいかを明確にし、ニーズ調査をおこないましょう。
統計データ調査
統計データ調査はデスクリサーチとも呼ばれ、公的機関が調査し公表している既存のデータをもとにリサーチをする方法です。調査対象者に合わせて数値の割り出しをおこなえるため、市場調査や業界の動向を調べる際の利用に適しています。
統計データ調査は市場調査の際、アンケートやインタビューなどの予備調査としておこなわれることが多いです。
また、統計データ調査をサービスとして提供している調査会社があるため、調査結果やレポートにまとめる作業をスムーズに行いたい場合は、依頼をしてみても良いかもしれません。
定性調査
定性調査は、調査対象の主観的意見を中心とした情報で数値化できない情報収集をする際に適しています。
以下に、定性調査の主な手法2つをまとめたので、市場調査をおこなう際の参考にしてみてください。
調査手法 | 特徴 |
---|---|
インタビュー | インタビューには、4つの種類がある使い分けることで、調査に適した回答やより深い結果が得られる |
SNS分析 | トレンドや広告の反響など、スピード感があるため、いち早く調査が可能情報が膨大なため、方向性をもって分析を進める必要がある |
インタビュー
定性調査の中でも、インタビュー調査は代表的な調査方法です。
調査対象者にインタビューをおこなって情報を集める方法で、目的や用途によって使い分けると調査に適した回答を得られます。
インタビュー方法には1対1でおこなうデプスインタビューや複数人でおこなうグループインタビューがあります。
ほかにも、専門家がおこなうエキスパートインタビューやインターネットを介しておこなうオンラインインタビューがあり、市場調査の内容によってインタビュー調査の手法を選択しましょう。
以下はインタビューの種類別の特徴です。
インタビューの種類 | 特徴 |
---|---|
デプスインタビュー | 1対1で行い、パーソナルな部分や深層心理に迫る話がしやすい一人ずつインタビューをおこなうため、時間がかかる |
グループインタビュー | 同じ属性の人が複数人でおこなうため、話が広がりやすい想定した以上の話を得られる場合があるが、他者の意見に影響を受けやすい |
エキスパートインタビュー | 各領域の専門家やジャーナリストなどの立場から意見や事例の収集をヒヤリングする方法専門的な意見を得られるため、スムーズに調査が行いやすい |
オンラインインタビュー | インターネットを介して、どこからでもインタビューを行える希少なターゲットをリクルートしやすい |
SNS分析
TwitterやInstagramなどのSNSを利用したSNS分析では、いち早くトレンドを把握したり、試験的にプロモーションを流して反響を確認したりするなど、スピード感のある調査や分析が可能です。
SNSの種類によって、利用者数やユーザー層、機能が異なるため、収集するデータに特徴があります。SNSの特徴を見極めて適した分析方法を選びましょう。
また、SNSには膨大な情報があふれており、ポイントを絞って調査を進めないと時間がかかることがあります。ハッシュタグやキーワードを駆使すると、市場調査を効率的におこなえるでしょう。
定量・定性両方の情報を得られる調査手法
調査方法の中には、定量調査と定性調査の両方の情報を得られる方法があります。主に訪問調査や日記調査があり、どちらも調査対象者の行動をモニタリングすることで情報を得る手法です。
以下の表では、それぞれの特徴を紹介します。
調査手法 | 特徴 |
---|---|
訪問調査(訪問観察調査) | 実際に調査対象者の自宅を訪問して、生活の観察や分析をおこなう無意識な行動から、インサイトの読み解き可能 |
日記調査 | 調査対象者にデータ記録を取ってもらう調査方法記録が残るため、過去の状況や実態の確認も可能 |
訪問調査(訪問観察調査)
訪問調査は世論調査を目的とした、調査対象者の自宅や職場などへ実際に出向き、生活を観察したり分析したりする調査手法です。
中でも調査対象者の自宅を訪問する調査は行動時間、行動頻度、行動順序、行動手段などが定量的な情報として得られます。また、調査対象者の無意識行動からインサイトの読み解きも可能です。
しかし最近では、個人情報やプライバシーの観点やインターネットの普及により、コストがかかりやすい訪問調査の実施は避けられる傾向にあります。
日記調査
日記調査は、調査対象者に一定期間、日常行動を文章や画像、動画で記録をしてもらう手法です。記録が残るため、現在の状況だけでなく、過去の事実状況や実態の確認もできます。
調査内容の例として、食事やスキンケアなどが挙げられ、データによっては睡眠調査や運動量などの定量的なデータの収集が可能です。訪問調査のように行動をベースに行い、調査対象者への理解を深められます。
さらにモバイルデバイスの普及により、調査対象者が離れた場所にいても調査を実施できるため、需要が増加している傾向があります。
市場調査のコツ・注意点
市場調査をおこなうにあたって、コツや注意点を確認しておきましょう。ポイントを押さえないと、調査データだけではなく経費や時間などを無駄にしてしまう恐れがあります。
低コスト・短時間で市場調査を進めるためにも、以下に記載したコツや注意点を参考にしてみてください。
調査開始前の準備を念入りにする
市場調査をする際は事前準備が最も重要です。調査の目的を明確にし、適切な手法を選ぶ必要があるためです。調査対象者の選定にズレがあると、結果が大きく異なる場合もあるため注意しましょう。
市場調査の目的や選定方法の土台作りが破綻していると、後の商品開発やマーケティング戦略の立案に役立たないデータになるため、調査開始前の準備は念入りにおこなわなければいけません。
また、定量調査をおこなう際は、調査した時に得られるであろう仮説の設定も重要です。仮説があると、調査結果のデータを有効的に活用できます。
収集したデータの誤差を考慮する
市場調査をおこなう際は、収集した調査データに誤差が生じることを考慮しましょう。
特に定性調査を活用する際は特に注意が必要です。調査対象のサンプルが少ないと大きな誤差が起こりやすくなりますが、定性調査はサンプルが少なくなりやすいうえ、得られる情報は調査対象者の主観となります。
その結果、実際と調査データにズレが生じる可能性が高くなります。
大量に調査したデータと、サンプルのみを反映したデータでは必ず誤差が生まれます。
数値の結果だけを見るのではなく、誤差を考慮する際は、どの範囲までを誤差とするのかを意識し、設計や分析を行いましょう。
ネットリサーチを積極的に活用する
ネットリサーチはアンケートサイトにアクセスし、Web上で回答をしてもらう調査方法です。印刷費や人件費を削減できるため、低コストでの調査が可能です。
現在ではパソコンやタブレット端末などから簡単にアクセスできるようになり、手軽にネットリサーチを取り入れられるようになりました。ネットリサーチは短時間で多くのデータ収集が可能なため、特に大規模なマーケットへの参入を視野に入れている場合は必須といえるでしょう。
ネットリサーチを提供する調査会社は数多くありますが、トムスはお客様の要望に合わせて調査内容の検討と最適な調査会社の選定を行います。市場調査をスムーズに進めたいと考えている際は、ぜひ利用してみてください。
市場調査のやり方まとめ
ここまで、市場調査の進め方や手法について解説しました。市場調査をおこなう際の全体の流れが理解できたのではないでしょうか。
さまざまな調査方法があるため、市場調査の目的や内容に合わせて調査手法や調査対象者などを選定していきましょう。また、なるべくコストを抑えたい場合は、調査手法を厳選する必要があります。
市場調査の各項目の流れを把握し、スムーズに最終的な意思決定が行えるよう、適切な手法を探していきましょう。