隠れ貧血(潜在性鉄欠乏性貧血)

隠れ貧血(潜在性鉄欠乏性貧血)は貧血の明確な診断が出ないが、体内の鉄分が不足しており、貧血予備軍の状態を指します。月経がある女性の約10~20%が貧血と診断され、これに隠れ貧血を含めると、より多くの人が影響を受ける可能性があります。隠れ貧血も貧血同様に深刻な不調を引き起こす可能性があり、心当たりのある人は内科や婦人科で相談することが重要です。

 

隠れ貧血ってどんな状態のこと?

貧血は、赤血球内のヘモグロビンが不足した状態を指し、ヘモグロビンは酸素の運搬に関与します。隠れ貧血は、体内での貯蔵鉄であるフェリチンが不足している状態であり、フェリチンは肝臓に蓄えられた鉄分を調節し、必要に応じて利用します。ヘモグロビン不足が起こると体内の鉄分を利用してヘモグロビンが生成され、その際にフェリチンの鉄分が使われます。フェリチンが減少しすぎると隠れ貧血になり、鉄の補充が追いつかない場合は本格的な貧血となります。

 

どんな原因で隠れ貧血になるの?

女性は月経により鉄分が失われ、特に経血が多い場合は隠れ貧血になりやすいです。鉄分は食事で摂取しなければならず、日常生活でも汗や尿、便とともに失われます。鉄不足は貯蔵鉄であるフェリチンの消費を引き起こし、隠れ貧血を招く可能性があります。貧血の原因は他にも疾患やビタミン欠乏、遺伝などが考えられます。軽度の貧血が見つかった場合は、自己判断せずに医師に相談し受診することが大切です。

 

どんな症状が出るの?

隠れ貧血になると、体力の低下を感じることがよくあります。鉄分の不足により、皮膚や爪が弱くなり、口内が荒れたり、食欲が低下し、氷を好んで食べるようになることがあります。イライラしやすくなったり、足がムズムズするなどの症状も見られます。貧血に進行した場合、息切れや疲れやすさが特に顕著で、例えば駅の階段を上るときに他の人と比べてひどく息切れする場合があります。これらの症状が現れたら、貧血の可能性が高いため注意が必要です。

 

検査と診断

内科や婦人科などで行われる血液検査では、ヘモグロビン、フェリチン、総鉄結合能(TIBC)、血清鉄(Fe)などがチェックされ、これらの数値から貧血や隠れ貧血などが判断されます。ただし、一般的な健康診断には通常、フェリチンや総鉄結合能の検査は含まれていないことがあります。隠れ貧血の疑いがある場合は、医師に相談し、検査を受けることが重要です。

どんな治療方法で、その費用の目安は?

血液検査の結果を基に、鉄分を補充する治療が行われます。治療には鉄分を含む錠剤やシロップの服用、注射や点滴が含まれます。初診時に保険診療で鉄剤が処方される場合、2週間分の費用は約3000~4000円程度であり、処方される鉄剤の種類によって金額は異なります。通常、初診後2~4週間にわたり鉄剤を服用し、その後2~3か月ほど継続的な治療が行われ、経過を血液検査で観察します。

 

隠れ貧血を起こさないための予防法は?

体内で失われる鉄分を補充するためには、バランスの良い食事が重要です。特に、吸収率が高いヘム鉄を含む赤肉や赤身の魚を積極的に摂取することが推奨されます。卵や豆、緑黄色野菜などに含まれる非ヘム鉄も適度に取り入れ、赤血球やヘモグロビンの材料であるたんぱく質、鉄分の吸収や赤血球生成に必要なビタミン、葉酸なども十分に摂取することが重要です。月経時や激しい運動後などは特に鉄分が不足しやすいため、意識的に鉄分を含む食事を摂るよう心がけましょう。

 

ドクターからのアドバイス

バランスの良い食事は貧血予防に有効ですが、食事からの鉄分吸収は難しく、ヘム鉄の吸収率も限られています。月経のある女性の一食に必要な鉄分を食事だけで摂取するのは難しく、サプリメントの活用が一つの選択肢です。医師の検査と相談を経て適切なサプリメントを導入することが重要です。調理時に鉄製の調理器具を使用するか、鉄瓶でお湯を沸かすことも効果的な方法です。