不妊治療と仕事の両立

不妊治療と仕事を両立することは難しい?原因と理由別の対処法を解説

不妊治療を経験した男性の16%、男女合計の23%が仕事との両立が難しく、退職を経験しているとされています。一部の調査では50%近いカップルが両立できたとも報告されていますが、退職が多い傾向があることは確かです。厚生労働省は不妊治療中の社員を支援するための研修を行っていますが、十分な成果が出ていないと報告されています。この記事では、なぜ不妊治療中に仕事を辞めることが多いのかと、仕事と不妊治療を両立する方法について詳しく紹介されています。

 

不妊治療中に仕事を続けられない2つの理由

不妊治療と仕事の両立が難しい理由は、まず、不定期に休暇を取らなくてはならないことが挙げられます。体外受精などの治療では、卵の採取などが休日に合わせて行われることがあり、これが仕事との調整を難しくします。次に、治療が成功しない場合、時間と費用が掛かり、精神的な負担が重くなることがあります。これがカップルにとってストレスやプレッシャーとなり、仕事への集中が難しくなります。

 

ここでは、仕事を続けられない主な2つの理由を紹介します。

 

不定期に仕事を休まなくてはいけない

働く女性が不妊治療と仕事を両立するのは難しい主な理由は、採卵や受精卵の戻しの日に最低2日間は仕事を休まなければならないことです。これらのプロセスは女性の体のリズムに依存し、休暇とタイミングが合わないと追加の休暇が必要になります。治療が順調でない場合は再度通院して排卵のタイミングを待たなければならず、これが不定期な休暇を要求する要因となります。平日の休暇が取りづらい職種では、不妊治療と仕事を両立させることが難しく、介護や保育の現場などでは退職を勧められるケースもあるとされています。

 

不妊治療が続くことの精神的な圧迫

不妊治療は体力的・精神的な負担が大きく、特に排卵誘発剤の使用により卵巣過剰刺激症候群が起こりやすい。この症状には頭痛、眠気、吐き気、倦怠感などが含まれ、車を運転する必要がある場合や体力を使う職場で働く女性にとっては苦痛となる。男性も造精機能障害により妊娠が難しい場合があり、原因が不明なため根本治療が難しい。不妊に対する自己責任感からくるストレスは、治療と仕事を続けることを難しくし、多くのカップルが悩み続ける。

 

不妊治療中に休暇を取りやすくなる2つの制度

厚生労働省は、不妊治療中の男女が休暇を取りやすくなるように研修制度を導入しています。これに加えて、不妊治療中の労働者が職場への理解を得やすくするために様々な制度が設けられています。

 

ここでは、2つの制度を詳しく紹介します。

不妊治療連絡カード

厚生労働省が制定した「不妊治療連絡カード」は、不妊治療を受ける労働者と雇用主との円滑なコミュニケーションを促進するための取り組みです。このカードは、労働者が希望する配慮などを職場に伝えるためのものであり、人事労務担当者向けに作成されています。様式は自由であり、主治医が必要な事項を選んで作成できます。特に、不妊治療のスケジュールや治療にかかる時間などを専門家が記載することで、職場に理解を得やすくなります。ただし、法的な拘束力はなく、あくまで配慮義務に留まっています。このため、企業の意思疎通が難しい状況や全体的なゆとりが不足している場合には効果が制限される課題があります。

 

不妊治療休職

一部の企業では、「不妊治療休職」という制度が導入され、これにより不妊治療中にフレックスタイム制勤務で治療と仕事の両立を図り、また治療期間中に休職して専念し、妊娠後に職場復帰して出産まで働くことができます。首都圏の大企業での導入例もあり、具体的な運用は企業により異なりますが、休職日数の上限や有給休暇の利用などが様々に設定されています。ただし、これらの制度は都市部の大企業に限られており、中四国、北関東、東北などの地域では利用が難しい傾向があります。このため、地方の中小企業に勤務するカップルでは、特に女性が離職せざるを得ないケースが増えているとされています。

 

仕事と両立を可能にするためのメンタル面でのサポート

不妊治療の成果が見込めず、費用負担や職場の理解不足によりうつ症状が発症し、離職せざるを得ないケースがあります。不妊治療中のメンタルのダメージを軽減するためには、治療を受けるクリニックや病院の看護師やカウンセラーに相談する方法があります。特に、周産期心理士と呼ばれる臨床心理士や公認心理師が妊娠関連のサポートを専門に行っている場合があり、総合病院などでは常駐していることもあります。治療中の病院からの紹介状を得て相談することも一つの手段です。

 

治療に専念するため退職を選ぶ

不妊治療と仕事の両立が難しい場合、治療に集中するために仕事を辞職する選択肢が存在します。この選択のメリットは、まず、ストレスが緩和されることで母体の状態が安定しやすくなります。さらに、時間的な余裕ができ、男女ともに体力の消耗を防ぐことができます。不妊治療は精神的にも肉体的にも過酷であり、ゴールが見えにくいという課題もあるため、完全に仕事を離れることで疲労を軽減できると言えます。

 

退職後に金銭的なサポートを受ける方法

退職後の生活費不安を軽減するために、不妊治療に関連する助成金制度があります。これには以下の具体的な制度が挙げられます。

  • 不妊治療費貸付制度:
    体外受精や精子の採取などの治療費用を貸し付けてもらえる。
  • こうのとりサポート制度:
    1年間につき12万円、最大5年間で60万円の治療費補助を受けることができる。
  • 共済会補助金制度:
    勤務先の共済会から治療費が5万円以上かかる場合に5万円の支給を受けることができる。

2022年4月からは、不妊治療に一部の行為が保険適用となり、女性保険も子宮筋腫や子宮がんの治療に関連して不妊に対処しやすくなります。これらの制度を利用することで、金銭的な不安を軽減し、治療に専念する際の心の負担を軽くすることが期待されます。

 

まとめ

不妊治療は完了時期が不明確であり、仕事との両立がストレスを生む課題があります。不妊治療と仕事の両立を支援する方法として、退職時の助成金や様々な制度が紹介されました。ただし、最も重要なのは当事者同士が仕事を続けるか子どもを持つかを優先順位を確認し合うことであり、女性だけでなく男性もサポート方法を模索するべきです。特定のクリニックでは患者に合わせた検査や治療を提供し、カップルが力を合わせて妊娠を目指せるようサポートしています。相談は随時受け付けており、お気軽にご相談いただけます。