女性の身体のしくみ

女性の体は男性とは異なり、妊娠・出産などの重要な役割を果たすため、まさに「産める身体」を持っています。この特別な性質から、女性の身体は繊細で複雑であり、その中に生命の神秘が感じられます。自身の体のメカニズムを理解することで、SOSの合図を察知したり、病気の予防ができます。

 

女性の一生と身体の変化

 

歳を重ねると、体の変化も自然な流れと言えます。特に女性は、年齢に応じて女性ホルモンの分泌や機能が変わり、それが穏やかな変遷として現れます。

幼年期(0~8歳ごろまで)

女性ホルモンはまだ活発ではない段階ですが、卵巣の中にはすでに数百万の卵子のもとになる原始卵胞が形成されています。同時に、外性器にも特有の変化が起き、これが第一次性徴と呼ばれています。

思春期(8~18歳ごろまで)

女性ホルモンが徐々に分泌され、身体は柔らかな曲線を帯び、女性らしい特徴を形成していきます。約11~14歳の時に初経が始まり、15~18歳頃には排卵と月経が安定し、妊娠・出産の可能性が広がります。これを第二次性徴と呼びます。

性成熟期(18~40代半ば)

女性としての身体機能が成熟し、女性ホルモンの分泌が順調になることで、女性らしい外見や容姿が整ってきます。この時期は、仕事、恋愛、結婚、妊娠、子育てなど、積極的に関われる充実感溢れる時期と言えるでしょう。

更年期(40代半ば~50代半ば)

卵巣の働きが次第に低下し、女性ホルモンの分泌が減少する一方で、卵巣を刺激するホルモンが過剰に分泌されます。このホルモンバランスの乱れが、様々な不調や症状を引き起こし、それが更年期障害として知られています。個人差はありますが、やがて閉経を迎えることになります。

老年期(60歳ごろ~)

女性ホルモンの分泌が完全に停止し、生殖器や卵巣も縮小していく過程が始まります。この過程で身体は丸みを失いますが、同時に脳や神経は急速には衰えず、むしろ判断力や創造力を向上させることができます。

 

生理周期と体の変化

女性の体のリズムをつくる2つのホルモン

生理のサイクルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモンの分泌によって調整されます。通常、生理周期は約4週間(28~30日)で1つのサイクルを構成し、生理が始まってからおおよそ14日目に「排卵」が発生します。これらのホルモンの影響により、女性の身体や心の状態は4つの時期を繰り返します。自分が今どの時期にいるかを理解することで、心身のケア方法を見つけたり、予定を組む際にも役立ちます。

生理中(1週目・低温期)

黄体ホルモンの分泌が減少し、体温が下がり、身体が冷えて血行が悪くなります。この状態では、生理痛や頭痛、胃の痛みが生じ、生理による出血で貧血気味になり、身体がだるさを感じることもあります。心身ともにモノトーンな感情が広がります。しかし、生理が終わりに近づくと、卵胞ホルモンの分泌が再開され、これによりブルーな気分から抜け出すことができます。

生理後(2週目・低温期)

排卵を迎える前に、女性らしさを引き立てる卵胞ホルモンの分泌が増加し、肌の輝きや美しい髪を生み出し、心身を活気づかせます。この時期には、卵胞ホルモンが排卵の準備を進めると同時に、女性としての美しさが際立つ充実感をもたらします。

排卵後の調整期(3週目・高温期)

大きな不調はないものの、黄体ホルモンの分泌が増加し、子宮内膜が充実してくるため、下腹部に何となく不快感や違和感を感じる時期があります。心身ともにテンションが高まりますが、同時に黄体ホルモンが精神的な不安定感ももたらすため、二面性のある繊細な期間でもあります。

生理前の不調期(4週目・高温期)

黄体ホルモンの影響が際立つ時期です。体温の上昇、むくみ、便秘、肩こり、頭痛など、身体的な不調が気になります。同時に、精神的な面でもイライラや不安感が強まり、最も不安定な時期となります。

正常な生理、異常な生理

女性は体格も性格も異なる個体差があります。同様に、生理についても人それぞれであり、個人差が存在します。ただし、病気が隠れている場合もあるため、異常な症状に気付いた場合は婦人科で相談することが重要です。自身の健康を守るために、不安を感じるときは専門の医師に相談してみましょう。

正常な生理のめやす

生理周期は25~38日間で、予定日の前後2~5日ほどのずれは正常です。精神的なストレスが影響して1週間ほど周期がずれることもあります。生理の期間は3~7日間で、出血量は20~140mL程度です。通常、生理痛が市販の鎮痛薬で和らぐ程度であれば、普段通りの生活を送る上で心配はありません。

異常な生理のめやす

頻発月経

月に2回または3回生理がある状態が続く場合、まず基礎体温を記録して排卵が行われているか確認しましょう。これらの症状はどれもホルモン治療が必要な状態ですが、頻繁な月経は更年期に近い女性でよく見られ、生理ではなく不正な出血が起こることもあります。早めに婦人科を受診して専門家に相談しましょう。

  • ・排卵がない場合(無排卵性頻発月経)
  • ・排卵はあるが卵胞期(低温期)が短く、生理から排卵までの期間が短い場合(卵胞期短縮頻発月経)
  • ・排卵後から次の生理開始までの高温期が短い場合(黄体機能不全型頻発月経)
希発月経

成熟期の女性で、周期が39日以上と非常に長い生理が続く場合、排卵があれば問題は少ないですが、排卵がない場合は不妊症や無月経の原因となることがあります。このような場合はホルモン療法が必要となります。

過多月経

生理が8日間以上続き、量が恐ろしいほど多いか、大きな塊状の組織が出る場合、ホルモンバランスの乱れや子宮筋腫、子宮腺筋症などの可能性が考えられます。

過少月経

出血が始まって3日以内で月経が終わるか、2日目でナプキンの交換がほとんど不要なほどのわずかな出血が続く場合、これは無月経の前兆症状かもしれません。身体に特に不調が感じられなくても、ホルモン療法が必要な場合があるため、婦人科の受診がお勧めです。