身体の調整に欠かせない物質である「ホルモン」の中でも、「女性ホルモン」は月経周期やライフステージによる分泌の変動が著しく、これが女性の日常的な健康に多岐にわたる影響を与えています。
女性ホルモンって何?
そもそも「ホルモン」とは?
ホルモンは、身体のさまざまな機能を調整するために不可欠な物質です。骨や筋肉の成長、エネルギーの代謝、血圧、食欲、および食物の消化など、これらすべてがホルモンの影響を受けています。ホルモンは食物から摂取するビタミンのようなものではなく、脳や様々な器官で生成されています。例えば、「インスリン」や「アドレナリン」もその一例です。現在、100種類以上のホルモンが特定されており、血液中のホルモン量は、50mプールに対してわずかにスプーン1杯程度の割合です。
「女性ホルモン」の役割は?
多岐にわたるホルモンの中で、女性の卵巣が生成するのが「女性ホルモン」です。女性ホルモンは、「妊娠・出産の機能、そのための体作り」という重要な役割を果たします。女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つの主要な種類があります。エストロゲンは「妊娠の準備」や「女性らしい体型の形成」に寄与し、一方でプロゲステロンは「妊娠の維持」などの役割を担います。
女性ホルモンの作用によって約28日の周期で訪れる月経も制御されています。
エストロゲン
- 子宮内膜を厚くし、妊娠に備える。
- 女性らしい体型を形成する(乳房の発育や丸みのあるカラダ)。
- 自律神経の働きを安定させる。
- コラーゲンの産生を促進し、美肌をサポートする。
- 血管、骨、関節、脳などの健康を維持する。
卵胞から分泌されるため、「卵胞ホルモン」とも呼ばれています。
プロゲステロン
・エストロゲンにより増加した子宮内膜を柔らかく維持し、妊娠しやすい状態を保ちます。
・水分や栄養素を蓄え、妊娠が確定すればそれを支え、妊娠を維持します。
・体温を上昇させる作用があります。
・食欲を増進させる作用があります。
これらの機能は「黄体ホルモン」とも呼ばれ、黄体から分泌されます。
女性のライフステージとホルモン
年齢とともに変化する病気のリスク
女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」は、充実した毎日を支える重要な役割を果たしています。しかしこれらのホルモンはごく微量で効果を発揮するため、わずかなバランスの乱れがさまざまな不調につながる可能性もあります。
さらに、これらの女性ホルモンの分泌量は年齢に応じて変化します。特にエストロゲンの変動は大きく、思春期には月経不順や月経困難症などのトラブルが発生することがあります。性成熟期には、子宮内膜症や子宮筋腫など女性に特有の疾患が現れやすくなります。更年期では卵巣の機能が急激に低下し、エストロゲンの分泌が減少するため、「更年期障害」と呼ばれる不調が起こりやすくなります。更年期を過ぎて老年期に入ると、エストロゲンによって守られていた肝臓、血管、骨、皮膚などの器官での問題や病気のリスクが高まります。
月経のしくみ
月経周期におけるカラダの変化と女性ホルモン
女性の体は、おおよそ月に1回のサイクルで、妊娠に備えて卵子が成熟し、受精卵の着床に適した子宮内膜が整えられます。
生理(月経)は、この子宮内膜が剥がれ落ち、それに伴って出血が生じる現象です。このメカニズムには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」が関与しています。
エストロゲンは、月経から排卵までの期間(卵胞期)に分泌が増加し、一方でプロゲステロンは排卵から次の月経までの期間(黄体期)に分泌が増加します。月経は微妙なホルモンバランスに基づいており、心身に不調や悩みがあるだけでも月経周期に変化が生じることがあります。
正常な月経の目安は?
自分の月経周期を知っていますか? 月経周期は、月経の始まりから次の月経の始まる前日までの期間を指します。月経の正常な周期は一般的に25~38日で、期間は3~7日間ですが、これには個人差があり、またホルモンバランスやストレスなどの要因によっても変動することがあります。