女性の健康には女性ホルモンが深く関わってきています。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、女性の生涯にわたり分泌量が変動します。この変化に伴い、女性特有の病気が発生しやすくなります。これらの病気について事前に知っておくことで、予防に寄与することが可能です。また、不調を感じた場合は、我慢せずに早めに医療機関を受診することが重要です。
女性の4つのライフステージ
①思春期・・・・エストロゲンの分泌量が増える時期
②性成熟期・・・エストロゲンの分泌が盛んな時期
③更年期・・・・エストロゲンの分泌量が急激に減少する時期
④老年期・・・・エストロゲンの分泌が乏しくなる時期
①思春期・・・・エストロゲンの分泌量が増える時期
初経後、子宮や卵巣の成熟に伴いエストロゲンの分泌が増え、女性の体は妊娠や出産に向けて段階的に準備が整います。卵巣の機能が完全に成熟するまでには月経不順や月経痛などのトラブルが現れることがあります。月経は女性の健康を把握するバロメーターと言えます。
月経トラブルに要注意
月経トラブル、特に月経痛は、一般的に年齢とともに軽減する傾向があります。しかし、年を重ねる中で月経がますます重くなるなどの不調が見られる場合は、早めに婦人科を受診することが重要です。
月経痛は「痛くて当たり前」ではない
月経が始まって数年は、体がまだ十分に発育していないため、子宮の収縮によって経血を押し出そうとすることが月経痛の原因となります。しかし、月経痛は「痛くて当たり前」ではありません。月経は女性の健康を示す指標であり、月経痛が現れた場合は強要する必要はありません。月経痛が日常生活に支障をきたすほどひどい場合は、月経困難症と呼ばれ、治療が必要とされることもあります。不快な症状がある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。
月経前の不調や不快気分とうまくつきあう
月経の前に、多くの女性が肌荒れやイライラなどの体の不調や不快な気分を経験します。これらは月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれ、通常は月経前に現れて月経後から次の月経前まで持続します。
②性成熟期・・・エストロゲンの分泌が盛んな時期
エストロゲン分泌が盛んな時期は、わずかなエストロゲンの変動が体に影響し、月経トラブルが増える可能性があります。これまで規則正しかった月経周期が乱れるなど、体が何らかのサインを示しているかもしれません。不調を放置せずに、早めにケアをすることが重要です。
子宮の病気があらわれやすい
現代の女性は初経の年齢が低下し、社会進出やキャリア形成による晩婚・晩産化が進んでいるため、妊娠・出産の回数が減少し、生涯における月経の回数が増加しています。これに伴い、月経困難症などの月経トラブルが増えています。同時に、この時期は子宮の病気(子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症など)が発症しやすい時期でもあります。
放置しないで早めに受診する
この時期には、日常の忙しさからくる下腹部の痛みや不正出血などの不調がストレスの結果だと思い込み、放置してしまう人がいます。しかし、これにより子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの治療が必要な病気を見逃す可能性があります。激しい月経痛がある場合は早めに婦人科を受診し、検査と必要な治療を受けましょう。同時に、この時期は結婚、妊娠、出産などのライフスタイルも大きく変化します。妊娠に関する悩みや不育症などの病気もありますので、産婦人科で相談し、早めの受診をおすすめします。
③更年期・・・・エストロゲンの分泌量が急激に減少する時期
エストロゲンの急激な減少により月経が永久に停止する閉経が訪れ、それを挟んだ10年間が更年期と呼ばれます。この時期はホルモン環境が大きく変化し、心身の体調が不安定になることがあり、これを更年期症状といいます。症状には個人差があり、生活に支障をきたす場合は更年期障害と呼ばれます。しかし、更年期障害には治療法がありますので、我慢せずに早めに婦人科を受診しましょう。
我慢しないで婦人科受診を
更年期に入ると、卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌が不足することがあります。この変化により、自律神経機能が乱れ、のぼせ、疲れやすさ、イライラなどの更年期症状が現れる。
生活習慣病の予防を心がける
エストロゲンは皮膚や粘膜の潤いを保ち、骨の代謝を活発にするだけでなく、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減少させ、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増加させ、血管を拡張する作用もあります。エストロゲンの減少に伴い、これらの効果が低下し、脂質異常症や動脈硬化の予防が重要となります。
④老年期・・・・エストロゲンの分泌が乏しくなる時期
寿命の延長に伴い、エストロゲンの恩恵を受ける期間が長くなりました。この時期では、エストロゲンがもたらしていた肌や骨、血管の維持に留意する必要があります。同時に、エストロゲンの減少によりうつ症状が現れることがあり、気分がすぐれない場合は無理をせず医療機関を受診することが重要です。
生活習慣病の予防を心がける
更年期を過ぎて体調が安定する一方で、閉経以降は生活習慣病のリスクが高まります。この時期では、脂質異常症や動脈硬化の予防がこれまで以上に重要になります。
腟炎に気をつける
エストロゲンの減少により、腟が萎縮して分泌物が減少し、腟からの出血が増加します。この影響で腟の自浄作用が低下し、細菌による萎縮性腟炎が発生しやすくなります。