妊娠中の仕事、今までと同じ働き方で大丈夫?

近年、妊娠中にも仕事を続ける妊婦が増加しており、その中で妊娠中の労働について悩む人が増えています。妊娠前と同じように働くことができるか、また体調がつらい場合の対処法など、妊娠と仕事の両立に関する重要な情報について解説します。

 

仕事によるストレスや疲労の蓄積には注意を

妊娠中の体に負担のかからない働き方で

現代では女性の就業率が上昇し、産休・育休制度の整備も進んでいるため、妊娠中でも働く女性が増加しています。これまでハードな仕事をこなしてきた人たちは、妊娠に伴う体調の変化や不安に直面することがあります。妊娠中は体調に波があり、協力体制を築きながら負担の少ない働き方を心がけることが重要です。

 

危険な作業はできるだけ避けて

妊娠中の女性が転倒や事故による外傷の危険がある仕事は避けるべきです。法律で危険な業務に就かせることが禁じられており、事業主には転換などの対策を求めることができます。ただし、具体的な職種や業務においては、流産率や早産率についての確定的なデータは存在せず、続けても絶対的な判断が難しい現状があります。

 

疲労に要注意

妊婦が働く際には、つわりや出血、おなかの張りなどの明らかな体調不良だけでなく、慢性的な疲労やストレスも考慮すべきです。一時的なストレスは誰もが経験するが、慢性的で継続的な疲労は問題となります。業務内容の見直しや調整が必要であり、妊娠中は無理をせず適切なケアが重要です。

 

体に負担がかかる仕事は改善を要求しよう

働く妊婦はさまざまな法律に守られている

現在、妊婦の働く環境を守る法整備が進み、負担の大きい作業は範囲が制限されています。妊婦には座ってできる仕事やデスクワーク、負担の軽い作業に転換するようにすることができます。

 

負担の大きい仕事の例

1.重量物を取り扱う作業

 継続作業6~8㎏以上

 断続作業10㎏以上

2.外勤等連続的歩行を強制される作業

3.常時、全身の運動を伴う作業

4.頻繁に階段の昇降を伴う作業

5.腹部を圧迫するなど不自然な姿勢を強制される作業

6.全身の振動を伴う作業 等

【出典/厚生労働省委託 母性健康管理サイト「妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ」より一部改変】

 

体調に影響のない軽易な業務に転換を

「負担の大きい仕事」は一例で、妊婦には法的に「妊婦の軽易業務転換」が認められています。この規定により、妊婦が軽易な業務に変えてもらうことが可能です。ストレスや疲労が蓄積している場合、上司に軽易な業務への転換を依頼することが推奨されます。また、妊娠中の体調は変動するため、休む必要があるときには休む環境も整えることが重要です。

 

交渉するときには働き続ける姿勢も大事

周囲に迷惑をかけたくないという気持ちから言い出しにくい人もいますが、おなかの赤ちゃんのためにも、お願いすべきことはしっかりお願いしましょう。軽易な業務への転換をお願いするときに気を付けたいのは今後の職場での人間関係や、産休・育休後の復帰までを見据えたうえで、自分にはずっとこの仕事を続けて戦力として貢献したい意思があるが、無事に妊娠・出産できるよう今は力を貸してほしいという姿勢です。また、協力してくれる上司、周囲の同僚には常に感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。

 

必要に応じて「母健連絡カード」を活用

医師が事業主に必要な措置を伝えるカード

例えば上司との交渉が苦手で言い出しにくい場合は主治医に相談して、事業主が必要に応じた措置をとってもらうための「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用しましょう。母子健康手帳にも記載されています。

 

制度をうまく利用して柔軟な働き方を

現在、妊婦は法的に守られ、妊娠・出産を最優先としたうえでの就業が可能です。つらい体調や危険な業務、負担の重い作業をする必要はなく、必要な療養期間を取るか、作業を制限してもらうようにするべきです。無理をせず体を大切にし、無事に出産できるよう、今だけは慎重に働き方を考えましょう。

 

もしも勤め先が納得してくれなかったら…

妊娠・出産・育児に関連する制度を利用したことを理由に、事業主が解雇や減給、降格、不利益な配置転換、契約を更新しないことを「不利益取扱い」と言います。もし不当な扱いを受けた場合は、会社内の担当者や労働組合に相談し、部署がない場合は都道府県の労働局などの外部機関にも相談をするべきです。

 

妊娠・出産を最優先にできる働き方をしよう

妊娠中は適切な働き方が重要で、けがの可能性のある業務を除いて特定の仕事を避ける必要はありません。ただし、慢性的な疲労やストレスの蓄積がある場合は業務の軽減や転換を依頼すべきです。妊婦は法的に保護されており、つらい体調のまま働く必要はないです。必要に応じて「母健連絡カード」を主治医に記入してもらうことも推奨されています。